髪とちっぽけな独占/くみ
 
「髪の毛あんまり短くするなよ?」

「しない」

「しないの?」

「だって指に絡められなくなったら困るでしょ?」

そう言って悪戯そうに笑う表情は何もかもお見通しってところだろうか。ならいいんだ。それならコイツはちゃんと自分が見て嫌な髪型にはしてこないだろうし。

「明日は美容院でちゃんと綺麗にしてくるからね」

「ぁ……うん」

コイツの髪はもう半分自分の物でもあるのだ。その髪を指に絡めていいのは自分だけでいい。どんな些細な変化も見逃さない。でもそれは、恋人には口が裂けても言わないが。
言ってしまったらコイツは調子に乗ってまたあれやこれやと髪を弄るに違いないから。

所詮は子供じみた独占欲、だ。


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