A River Runs Through It/あおば
みじんと鳴って落ちる月
高い梢にキタキツネ
朝露の
濡れる重さに耐えていた
非体験の罪状は
朝日の中でも暴かれて
憎々しげに現れる
認否を迫る百済の観音
内蔵する
輪廻転生の非可逆過程を
清らかな
流れにまかせる媚薬色の
きぬぎぬの別れを惜しむ別嬪さん
痘痕を削る鮫の皮一枚の水羊羹を懐かしむ
ふだらかほだらと練り上げた
不老不死の錬金術は
オート三輪車の走る音
怯える層状の大地から
光る亀裂の隙間から
転調された
男と女のブルースが
薄暗い森の奥へと漂って
無言のままの排気音
油の切れた
ショックアブソーバーからは
掠れて声にもな
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