「事件とウイスキー」/mizu K
あの日遮られない渡り鳥たちの羽ばたきが折からの強い季節風によって大きくねじ曲げられていく風景を窓辺から眺めていた
手もとの机の上には整えて並べられた琥珀のかけらたちと剥落した魔法瓶にさした花々
ひびわれたグラスからはウイスキーがどくどくと染み出しているのだがその勢いがまったく衰えない
窓の外を灰色の人々がゆらゆらと歩く
季節の大風が吹いてそこかしこにかろうじて残っていたやわらかいものを根こそぎ切り裂いていく
うなるような声を上げて家屋をゆらせば
それを追いかけるようにしてざりざりと雹が地面を突き刺す
カラスは鋭く鳴いて塀の向こうへ飛び去った
ある日北端の蒸留所のある風景で
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