季節外れ/くみ
 
そんなに見ないで……」

見ていた事を誤魔化すかのように、俺は恋人の肩をそっと自分の方に引き寄せてみる。いきなり触ってびっくりさせてしまったのか緊張気味な背中を安心させるように優しく撫でてやる。

「もうすぐ夜になっちゃうな」

「うん。でも陽が落ちる時間は嫌いじゃないよ」

「たぶん今日は雲も出ないから月明かりも見えるかな?」

「満月だもんね」

夏の終わりの感触、恋人の姿、台所にある料理、揺れる風鈴の音。
隣に居る恋人の身体の熱も柔らかい風が吹き抜けていき熱を少し下げてくれる。本当に夏が終わって欲しくない位に居心地がいい。

暫くそのままにしてると暮れゆく空にうっすらと輝く月が出てきた。それを見つめながら俺は恋人の綺麗な頬と唇にキスをしてみた。
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