幼馴染/薬堂氷太
嗚呼 もどかしい
しぃん と静まり返った水面の様な僕が
貴方に言葉を投げ込まれて
波紋を浮かべるくらいしか
出来ない自分が
とうとう もどかしさに耐えかねて 僕は笑いました
曇天をふっ飛ばさん限りの声で 笑いました
雨が降って絆の柱が消えるが恐くて 笑いました
恥しさに負けた自分を 笑いました
すると 貴方も笑いだしました
何かを誤魔化すように 必死で笑いました
貴方の笑い声で 僕の水面が暴れるように波打ちました
溢れそうな水面が 瞳から流れそうでした
嗚呼 これほど情けないことがあろうか
フィルターだけになった煙草が さらさら と風に攫われてゆきました
喉元に引っかかる何かに 違和感を覚えながら僕は貴方を見送りました
全てが終わる それ を
僕はどうしても吐くことが出来ませんでした
「僕も貴方のことが好きです」
なんて
言えるはずもなく
貴方は 手を振りながら曇天の光の柱に 吸いこまれていったのです
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