胎動/由木名緒美
 

両の手の平に抱かれる宇宙
手からはそれを引きつけ、また離す力が充てられるから
楕円形をした宇宙は落ちることなく、ふわふわと手の間をおよぐ

頭(こうべ)から髪が抜け落ちるように
放射線は魂を洗いざらい剥がし、また打ちつける
癒したい病はおぼろげな輪郭を現すことをせず
細胞を倍に膨らませては心臓を締めつける

宇宙はなんと幼いのだろう
赤子のように身をたゆたわせ
悪意などまるで無いかように瞳をかがやかせる

苦痛を産むは人の親
子に引継ぎし業は火炎を上げて火山を滑り落ち、
閉じた瞼に羽毛の祝福を告げる

その漆黒の空間に孕み
意味を現さないものの道筋を願って
内へと入り続ける意志を持つ
深く深く進む者

ただ一人、
己だけが地図を現し
血に滾る生まれ変わりの予兆を受けて
輪廻の胎盤へと吸い込まれるのだろう
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