ぶかぶか【詩サークル「群青」九月のお題「音」から】/そらの珊瑚
 
母の手作りする洋服は
大体において
あらかじめ寸法が大きかった
未来が足されていたから
子どもはすぐ大きくなっちゃうからって
それは言い訳というより
有無を言わせない印籠のように掲げられた
スカートの裾はたっぷりと折り曲げられていて
それは翌年にはするするとほどかれたが
しばらくは折り目が消えず
不細工だったであろう
けれども現実とはそういうもので成り立っている、
として妙に納得していた
わきも
くびのあきも
丈という丈が
ぶかぶか言って
借り物であることに
持ち主の代わりに文句言ってるようだった
もう今は
なにもかもが
ぴったりで
あのぶかぶかは戻って
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