九月の子/佐東
 
(瞳をもたない
(いきものの
(においがする

夏が
眠りにつくよりも
早く
底辺の夜は
その
密やかな手のひらを
ひらいてゆく

仄かにひかる土のうえ
満たされない
季節の再考をねがう
手のひらが
夏を
ゆっくりと
腐敗させてゆく





あたたかいものから
順に見えなくなってゆく
はだかの子が四人
庭の四隅で
膝をかかえている
互いの名を
呼びあう声が
ききとれない喃語で
たちのぼり
滲んでゆく
いくつもの影が
月の光にふれるたび
夜の水位は上昇してゆく





星の
うまれる
音をきいていた
夜露に溶かされてゆく
視線のさきで
あたらしい夜着を
用意している

(うまれたての星
(その光が
(きみたちの瞳に
(なればいい



庭の四隅で
はだかの子が
ひとりずつ
しずかに燃えてゆく





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