九月の子/佐東
(瞳をもたない
(いきものの
(においがする
夏が
眠りにつくよりも
早く
底辺の夜は
その
密やかな手のひらを
ひらいてゆく
仄かにひかる土のうえ
満たされない
季節の再考をねがう
手のひらが
夏を
ゆっくりと
腐敗させてゆく
*
あたたかいものから
順に見えなくなってゆく
はだかの子が四人
庭の四隅で
膝をかかえている
互いの名を
呼びあう声が
ききとれない喃語で
たちのぼり
滲んでゆく
いくつもの影が
月の光にふれるたび
夜の水位は上昇してゆく
*
星の
うまれる
音をきいていた
夜露に溶かされてゆく
視線のさきで
あたらしい夜着を
用意している
(うまれたての星
(その光が
(きみたちの瞳に
(なればいい
庭の四隅で
はだかの子が
ひとりずつ
しずかに燃えてゆく
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