癒着から生へ向かう/ヒヤシンス
 

秋のほんの少し気取った風に公園のコスモスが淡く揺れる。
黄昏時に語らう恋人たちは私にささやかな幸せを運んでくれる。
感情の昂りを抑えるために訪れたこの公園の静けさはちょうど良い。
私の嗅覚は名も知れぬ花々の微かな香りで満たされるのだ。

私の放ったあなたは今どこで何をしているのだろう。
行き先を指定しなかった私のことなどすっかり忘れているのだろうか。
それでもやはりあなたは私と繋がっているのだ。
旅路をゆくあなたの視線は束縛という文字の彫られている石碑を見るだろうか。

街路灯に浮かび上がるガラス越しの人形はきっと私だ。
さすらう魂との乖離こそ私の悲しみそのものだ。
あなたの想う寄る辺なき魂のふるさとはここにある。

外灯点る公園でコスモスがさわさわ揺れる。
ベンチ越しの恋人たちに安堵を覚え、私ははっきりと確信した。
いるじゃないか!私はここにいるじゃあないか!!

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