しののめに立ちて/ヒヤシンス
 

午前五時。満たされた心に筆が泣いている。
家を出て川辺に立ち、今は何も語らないせせらぎが時を刻む。
頭にぽっかりと穴が開き、そこに寂寞が広がるのはなぜ?
こんなにも心は満たされているのに。

大いなる感覚の矛盾に、僕は胸苦しさを覚える。
川の清冽さに感情はなく、水辺の鳥達も沈黙を守っている。
明け始める空は薄いグレーの天蓋で覆われている。
まるでここは僕が今まで見たこともない場所のようだ。

あらゆる色に染まっているあの部屋に今はまだ帰りたくない。
私の机上には「無」と書かれたままのノートが広げてあるだけだ。
そして今でも筆は泣いているだろう。

なぜなら僕の心が十分に満たされているから。
満たされない心を描くことはたやすいが、満たされている心を描くことは難しい。
しかし・・・。それでも僕は描こう。精一杯鮮やかな色彩で「夢」と描こう。

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