ありがとうね。/ヒヤシンス
煤けた屋根裏部屋でまだ見ぬ宝物を探すような胸の高鳴りを感じる。
僕はトム・ソーヤであり、私は赤毛のアンであった。
一方に父方の威厳を、また一方に母方の愛情を持つ感覚。
目に見えないものを見、聴こえないものを聴く感覚であった。
ありがとう。この言葉を言いたくて今を生きている。
ありがとう。この言葉を聞きたくて私は私の旅路をゆく。
きみは自分を許すことが出来たかい。
尊くて慈悲深い存在が、自分の内にいることを知ることが出来たかい。
生を疑い、死を隣人に持つきみはまともだよ。
死の誘惑は甘く、苦い生を包み込むには十分過ぎるくらいだからね。
でもね、死ねないよ。死にた
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