水蜜桃/伊織
遠い日
私をすこやかに育てなおしてくれた人よ
今
あなたの真似事をしています
背負ってしまった陰を呑み込んで
人知れず水鳥の如く足掻きながら
あなたは
微笑むことを忘れませんでした
あなたにも朝が来るの、
わたしだって生きているんだから
何もかも許容して
その実
不条理を許さない
強い人でした
最後に手を放したその日まで
どうしてあなたは
私を見つけてくれていたのでしょう
今年の夏はとても暑く
休日の路上は溶ける
滑りこんだ喫茶店で終わらない独白を
宙に消え去って構わない、
刹那を孕んだ独白を
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