一方井亜稀詩集『疾走光』について/葉leaf
 
テムとして読むことが可能だ。物語とは事実の記述によって変化を説明するものであり、物語作者の織り成すテクストであり、世界の根源的な「存在のカオス」に一定の筋道を与えるものである。実際、引用部では、詩の主体は道を歩きながらガードレールの傷に気付き、そこから事故のもたらす結果を嫌がっているのである。「道を歩く」という物語の導入から、「ガードレールの傷に気付く」という物語の展開、そして、「事故の生々しさを厭う」という主体の変化・結末へと物語のテクストは編まれていくのである。この際、一方井を取り巻く微小な出来事はほかにも無数にあったはずだし、一方井の内面ももっと複雑だったろう。だが、一方井はそのような存在の
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