むらぎもの心/月乃助
 

雨の去った午后
 くもがくる 心の硬貨は、
 ありし日の 思い出


ゆく雲は
 どこまでも
 どこまでも なだらか
 秋をかざす 陽光のサンデッキに
 秋空を ことほぐ妻がいた


蜜のような笑顔に
 ショボン玉を
 さしだし、


くちさがない君は、
 痴れ言のことだまや 根なしごとをシャボンに吹き込んでは、
 まことしやかに晴れた 空に
 遊ばせ ほころぶ


幼子を追うにまかせ
 七色の
 シャボン玉の 楽しげに にげさるだけ 


記憶の貯金箱に
 幸せの硬貨は、
 水の中を舞うように 光へと
 きらびやかな底へと、ゆらめき落ちた


追想に
 思い出への逃避を 逃避しようと


昔 すごした
 ぬくもりの思い出をおしのけ
 ぎりぎりの 
 道らしきものを 求める



幸せを掬(むす)ぶことに 
 心をくだき


身をつくし
 幸せの硬貨をためた


そのたくわえに 知らずに
 今日は、ひとつ
 手がふれる









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