真っ直ぐに落ちる雨が綺麗/北橋勇輝
何かを落とすように
真っ直ぐに落ちる雨
今頃、彼女の家の屋根は
だらだらと地面に水を落としているだろう
買い物の帰り、彼女の家の中から
ピアノを弾いている音が聴こえたんだ
一年前に彼女は俺に
ピアノを習っているということを話してくれたっけ
そのピアノの音で思い出したよ
そのピアノの音はつまり
彼女の心情を表してるってわけか
今から彼女の家のインターホンを鳴らしてもいいかな
彼女はピアノに夢中で気付かないんじゃないかな
今、雨が降っているということも気付いていないのかもしれない
誰かが私のことを呼んでいるような気がした
一旦、ピアノを弾くのを止めて私は立ち上がり
ゆっくりと玄関のドアを開けて外へ出た
私の目の前で雨が降っていた
綺麗に真っ直ぐな雨が降っていた
その雨はいつ降っていたのか分からない
私がポストの中の新聞を取りに行ったときは全く降っていなかった
私は誰もいなかったので家の中に入り
さっき練習していた曲を最初から弾き始めた
戻る 編 削 Point(1)