君をさらって/北橋勇輝
 
その日はとても暑かった
何をしても集中、出来なかった
砂浜の上を小さな裸足で踏んづける
「いつもここに来るの?」
「辛いことがあった日に来るよ」
「じゃあ今日は辛いの?」と僕は君に聞かなかった

次に会えるのは二学期じゃない
三学期でもない
もしかしたら、もう会えないかもしれない
君は溶けてるアイスクリームを急いで食べるみたいに
いつも慌てていたね

あの日、君をさらっておけば良かったな
砂の上に書いた恋文はもう波にさらわれてるだろうな
あの日、君に言っておけば良かったな
「好きだ」
いつか君に会った時、波にさらわれないよう
この言葉、届けるよ

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