増幅/Seia
私は声をきいている
決して名乗らない
声をきいている
しずかに寄り添う
声をきいている
海に行く日はきまって
不純物のたまった体を
丸ごと洗ってしまいたい時
呼吸器までも
腐食してしまいそうな風
駐車場には何もいない
ただれたシーズンを
少し後ろにおいて
錆びた箇所をもいでは投げ
もいでは投げを繰り返して
砂につかまれた足首から下が
ひいていく波と供に
溶けて 同化して のみこまれ
乱反射した光が皮膚を突き刺して
そこだけウロコになる
私は声をきいている
全身が震えて
声をきいている
一体誰の
声をきいているのだろう
増幅回路として海を選んだことは
わかっているのだけれど
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