香之手紙/影山影司
っぱい味が、手紙を読みよると蘇るようでなぁ……」
尻すぼみの言葉を消すように、冷えた味噌汁を啜る。
俺は、うまく言葉が出ないままに、兄貴のグラスへビールを注いだ。
「でもな、最近の手紙からは、なんも匂いがせんようになったんやわ」
「どうして?」
「分からん、そしたらだんだん、返事も遅れるようになっての。今まではすぐ帰ってきたんやけどなぁ。内容も、最初は便箋一杯細かい字で書いとったんが、二行使って書くようになったりしてな。飽きてしもうたんかなぁ」
兄貴の顔が、陰る。
飯も終わり、空いた皿を洗っていると、兄貴がダンボール箱を持ってきた。
「見てみぃよ」
口を開けると
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