船酔い/睦月十八
 

夏の密度に五感が塞がれる
見たことのない景色
デジャブ、均等を失う感覚に
船酔い

昔から弱かった
友達より先生より親より
拠りどころだった
あの頃、レモンのキャンディ

今は夏に酔う

大人買いをした
酔い止め用のレモンが
船底でころがって
拾ってくれるだれかがきっと
運命の人

ゆれてはみ出した
塗り直しのリップを笑って?
 レモン、転がしてあげる――

船酔いがひどいみたい
ポケットのキャンディをまさぐる

変わらない
バリエーションを増すのは夢のほう
ときどき現実より、リアルなんだ

耳鳴りがして
密度をかきわけていく

レモン、どこ?


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