両サイドに詩人/朝焼彩茜色
 
小学校の新学期のような香り 
ニスの塗っていない木晒しのカウンター 両サイドに詩人

木漏れ日は蝉の亡霊と小春日和 ぬくぬくと光は木霊する

カウンターに座り 両サイドに詩人 語りを始める
喋り言葉がままならず 身振り手振りまでも比喩になる

そんなカウンターには 湯気の通った温もりが溢れていた

左サイドはカーキのモッズコートで眼鏡をかけ 緑茶の湯気で曇らせていた
 特に語ることはないようだ 世間話で吹き出していた
 笑いのツボが一際ずれている優等生

右サイドはくしゃくしゃの髪を聞いてもいないのにセットしたと
 挨拶がわりに云っていた その辺の木の枝を拾い 閃いたと目を丸くしていた
 画家と写真家を経由してきた流浪人


小学校の新学期のような香り
大人だから 教室に似合わないカウンターの隅で
少し授業を聞きながら 童心に癒されながら それぞれの飲み物をすすりながら
語りの空気を仰いでいた 童心の木漏れ日の空を

中央は喋り言葉がままならず 身振り手振りまでも比喩になる
笑いながら
笑い合いながら
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