夏、プールにて。/時子
 
だった。

「あ、…っ、」

プールサイドにトロがいる。
ぷらぷらと満足そうに尻尾を揺らし、ウトウトしながら撫でられている。
涙がポロっと落ち、転んで汚れたギプスを塗らした。
撫でているのは、誰…?

錆びて塗装の剥がれたフェンスを掴む。昼間の熱を残していて手に焼き付くように熱いそれを、僕は形を変えてしまうくらい握り締めた。
息が出来なくなった。
女の子の足は海のような、空のような、不思議な青い鱗で覆われていた。

「この子は怒ってないわ」

女の子はトロを撫でながら呟いた。

「むしろ、これで当然だと思ってる。この子は毎日、アナタがこの狭い
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