夏、プールにて。/時子
 
られないのだ。
あの感覚を。
あの狭いプールの中に広がる、青い世界を。


「トロのせい、だ…」

口に出すと本当にそんなふうに思えてくる。
言葉って不思議だ。
トロが寝ていなければ事故にあわなかった。
顧問に嫌味を言われる事もなく、大会にだって出られた。嫌いな勉強だって、後回しに出来た。
あの青い水の中を、いくらだって泳いでいられたのに。
泳ぐことが、あの水の中にいることが、僕の青春だったのに!


「ちくしょう…!!」

そう考えると、楽になると同時に、僕は自分の感情にブレーキが聞かなくなった。
気付いた時にはもう、落ちていた空き缶を
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