夏、プールにて。/時子
のど真ん中で昼寝中のトロだった。
トロいなりにあの事故の事を気にしているらしいが、猫に気を使われてもなんの気休めにもならない。
「もう、いいから。お前のせいじゃねーよ」
最初の何日かは、僕も気を使ってそう言ってやっていた。でも、トロは「のぁー」と気の抜けた声で鳴くだけで全くついてくるのをやめない。
大会があろうがなかろうが、もう高校三年の夏休みだ。
受験勉強を本格的に始めてしまえば、すぐに泳ぐ事なんて忘れてしまうだろう。
むしろ、今まで部活ばかりで勉強をしてこなかった僕にとって、今回の事故は学業再開のチャンスだとさえ思う。
なのに、トロがいるから忘れられ
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