夏、プールにて。/時子
 
を助けても、水中で泳ぐのを助けてはくれない

「本当に、すみません…」

松葉杖の持ち手を、顧問にばれないようにグッと掴む。僕が悪いわけじゃないのに、僕は何に謝っているのだろう。
あの事故にあってから、僕はわからない何かにいつも謝り続けている。



うちの近所にトロという有名なノラ猫がいる。けしてゲームに出てくるような賢い喋る白い猫ではない。
トロは名前の通り、何をするにもトロかった。
餌を食べるのも、塀の上に登るのも、やる事なす事とにかくトロい。だから皆トロと呼ぶ。
そのトロが最近、僕にまとわりついてくる。

僕が足を駄目にした日、助けた猫は道路のど
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