十日後の蛹/ニワコ
十日後の蛹は還った、土に
それはどこかの子供に
踏まれてしまったから
大地を踏みしめることを
生きている事だと教わった
羽ばたくことを
人間たちは許さない
その下の下の方に
眠っている蛹たち
大地と外気の境界を、
超えることなく息絶えた
人間の考えた、
土を掘る機械とやらで
掻き回された寝床を
まだ、出ることの許されない
軟らかい体で見つめるのだ
少しだけ浮遊する、
照り返されるアスファルトの上に
転がって踏まれて潰れて
出られなかった、蛹
命が消えるのは
こんなにも容易いものなのだと
生きたいと、鳴きたいと
ほんの少しの命を燃やすことさえも
人間は許せず
大地を踏みしめるのだろうか
十日後の蛹の産声を
待ち望んでいた
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