背負って生きられるのかね/影山影司
事実、彼女の嚥下する喉は、ほとんど動いていない……静かに、静かにワインを楽しんだ。カミオはそれを見るのが好きだった。
「最近の流行りなのね」
と、トット。
彼女の冷ややかな目は、窓の外を通る通行人に向けられる。
その横顔の、鋭く高まった鼻の、指す方向に彼女の見ているものがある。トットの瞳の表面にも、ほのかに同じ光景が反射して映っているだろう。そこに自分だけを、ずっと映せたら自分はどう思うだろう。カミオは、時折結論にたどり着かない程度にそのことを考える。
トットの見る通行人は、植木鉢を抱えていた。赤ん坊を支える、抱っこ紐のようなものを肩から腰に掛けながら。前開きのボタンシャ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)