蛇口/時子
 
、気になっても触らないこともあった。

でも、どの人も蛇口を捻れば水が出て、しぼんでいって、最後には消えた。




「ただいま」

「おかえりなさい」

就職し、家を出て、僕は優子という彼女と同棲生活を始めた。
優子とは大学時代の合コンで知り合い、何度もデートを重ね、今にいたる。きっとこれからもずっと隣にいてくれるのだろう。名前の通り、とても優しい子だった。

でも、僕はその優しさに甘えている所があった。
言い訳になってしまうが、最近仕事が忙しかった。家に帰るのは遅く、休みの日も寝てばかり。学生時代と同じように二人で外に出る機会は減り、恋人らしい事も少
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