蛇口/時子
し、ゴンも昨日寿命でとうとう死んでしまったのだという。
「昨日は本当に消えてしまいたいくらい悲しかったよ。でも、この思い出の公園でゆっくり二人との思い出に浸っていたら、なんだかすーっと悲しみが消えて心が軽くなったんだ。今は此処から少し離れた息子夫婦の所にやっかいになっているよ」
そう言って、おじいさんは微笑んだ。
あの事件からもう十数年。今も蛇口は見え続けている。
小学生からお年寄り、人種も性別も関係なく。
すれ違う人全員に蛇口があるわけではない。ある人がいればない人もいる。
そして僕はと言えば、なんとなく気まぐれに蛇口をひねってしまうこともあったし、気
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