いつかの夏の日記 みたいなものあれこれ/佐東
 
けられるような 物悲しいような 蝉たちに
目を瞑り 手を合わす
すると
足もとの 地面いっぱいに
うず高く積まれた蝉の死がい一つ一つから
か細い 植物の蔓のようなものが
しゅるしゅると伸びてきて
空に向かう

それは 半透明で
強い夏の日差しを きらきらと反射させて
幾千もの光の筋が 真っ直ぐ
空に向かって伸びてゆくようで

やがて
蔓のさきから 真っ白い
ちいさな折り鶴が
次々と 咲いてゆく

強い風が さあーーと吹くと
折り鶴たちは 一斉に
羽ばたいてゆく
幾千もの折り鶴たちが
大きな白い帯となって 空を舞う

一本の大きな 白い大河のように
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