白い林檎/済谷川蛍
ドアは元の白い曖昧な壁に還元されて、この完全に隔離された空間は、それ自体小さな異次元の世界のように思えた。少年は途方に暮れているようだった。この部屋には、テレビもなければパソコンやラジオもない。そして、彼のほかに誰もいない……。窓もなければ、風景もなかった。ただ、白いテーブルの上に、得体の知れない白い林檎が、何者かによって用意されていた。少年は頭が良かったから、その白い林檎の正体を鋭く察知した。そして、その林檎から得た知覚の働きと仮説とが、この部屋の正体をも類推させた。少年の答え。きっとあの林檎は、僕というものを完全に殺す毒なんだ。そしてこの部屋は、僕を、この"何もかも白い世界"
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