取り替え子/影山影司
カウンターに置かれた、マグロの山かけを見て、好物なんですよ、と彼が言う。箸で器用にわさびを乗せて、頬張り、一気にビールを煽る。
快活な男だった。
名前を、悠二というらしい。
年は私のほうが随分上だったが、悠二は何か人に近づく才のようなものがある。年齢差を感じさせずに、私達は話にのめり込んだ。
悠二は、気がつけば思い出話をするようになった。
昔、魚が嫌いな友達がいましてね……、と。ポツポツと話すうちに、調子が良くなってきたのか、袖を捲り上げて時折ビールで口を湿らせながら、語り始めた。
友達は、同じ団地に住んでましてね。名前を、優一って言うんですよ。悠二と優
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