悲しき野心/ヒヤシンス
窓辺のカーテンをすり抜けて、部屋中に漂う貧弱な香り。
太陽も顔を見せず、私の戸惑う心を反映した薄い雲が
空という画布いっぱいに塗りたくられている。
外を歩く人は思想の往来をただ足早に通り過ぎる。
私はこの萎れた花のような午前を眺める人だった。
風は確かにうっすらと窓外の香りを運ぶが、
この部屋に入るなりそれも一瞬で消えてしまう。
鏡に映る私の顔にはかなさを感じて私は一人うなだれる。
それは悲しき野心。
戸惑いの分だけ求める力も弱くなる。
ピアノの鋭角な音色が私の心を突き刺す。
私は孤独な野心家。
私のこのさびしい部屋には野心が充満しているが、
私の求める力が弱いので誰もそれとは気付かない。
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