蜻蛉の泉/月乃助
空に むきだしの骨をさらす伽藍
「歴史」はいつも古びた建物を残していく
廃墟のあとにしか 平和が生まれることがないのなら
平和は、あまりに残酷な子
森は、朝にめざめ
戦いの前ぶれのように 覚悟をきめ
映像でしか知ることのない その日に歩みいる
核分裂が刻印した
蛮刀がふりおろされた 港街の眉間へと、深山へと
蹲るのは、
人間を否定する 非・人間的な
生きた/焼けた人の塊
泉のほとり
少女は、昨日落とした願いの
小石をひろっている
‐ その指先に 蜻蛉が翅をやすめるにまかせ
( 海のむこうの誰もが、
いつか
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