もらい乳/そらの珊瑚
 

牛舎についた
どこか懐かしいような獣の臭いに
体ごと抱き込まれるような気がして
慄き、思わず息を止めた

ばーばは一升瓶を捨てたりしない
それは繰り返し
牛の乳が注がれるものだから
実らない母性がフル回転している
実らせないよう仕組まれた母性がじゃぶじゃぶと搾取されている
わたしは
ほんとうは牛の仔
抗うことを放棄した
かなしい眼をした黒い顔の母がいた
白い乳はほのかに甘く生暖かく
喉の奥を慈愛で浸らせて
今も
私の一部でごくりごくりと反芻されて生きている


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