神殿 /服部 剛
無数の髪は今日も伸び
目は開き
耳は聞き
鼻は吸い
口は吐く
首は支え
手は掴み
左の胸は一生涯とくり、とくり、と脈を打ち
腹は昼頃、鳴るだろう
そしてお尻はもよおすだろう
夜間の精巣に種は増殖し
目覚めれば
この両足は今日も何処かへ、私を運ぶ
全てはその時々
脳が指令を出しており
脳を(創造した者)は
自らの姿を世に現すこともなく
時に
風となり
雲となり
草や花や蝶となり
頭上に広がる青空は
全ての存在に無言で(よし)と云うだろう――
僕を
あなたを
ありのままに流転する、この美しく汚れた世界を
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