岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
に描くのか」という権威である。題材の決定、手法の選択、割く時間、作品を完成させることなど。言いかえるならば、画家が作品を描く際に反映させる「数々の選択」である。たとえ、印象派であろうと、キュビズムであろうと、抽象絵画であろうと、時代性や手法によってひとくくりにされている1グループ内において、全てにわたって同じである絵画が生まれたことはかつてあるだろうか。モネとルノワールは手法が似ていようとも、描いているものは全く異なり、ピカソとブラックも似ている箇所は多く見受けられるが、その両者は全く違う絵を描いてきた。それは、画家が一人の人間であり、作品に対してauthorityを持ち、様々な選択を反映させてい
[次のページ]
戻る   Point(4)