岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
来自然は美でも醜でもない。自然にすぎない。それはただの事実である。ただ人の心はそこに『美』を見出す」p.82
 「芸術における写実が、もしこの事実または自然をありのままに写すということに止まるならば、その道は芸術であるとは言えない。そこにはなんの『心』の問題もなく、無形の域がない」p.83

 事実=自然だと劉生は述べ、真実にあたるものは「心の問題」だと言えるだろう。こうした「心の問題」は、劉生の言う「内なる美」というキーワードと結びつく。劉生は、芸術において重要なのは、「内なる美」を表すことだと述べている。

 「本当の写実の道は、言わば『写美』の道である。すべての美術の道は『写美』で
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