岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
いを指摘し、その批判から始まっている。

「なんでもかでも自然なら美しいのだから、それをただ忠実に写しさせしたらしたがって美も宿るわけであると考える。」p.81
 
その上で、「本当」「事実」「真実」というキーワードを持ちだす。

「人生や芸術には『事実』以上のことがある。人生の目的にとって、「本当」のことか否か、これが大切である。すなわち、「事実」と「真実」の相違である」p.82
 
「事実」と「真実」という言葉の違いは、日常ではあまり意識されるものではないが、劉生の言う「事実」は言わば、オリジナルとコピーという比較のことであり、「真実」は「事実」以上のことである。この「真実」と
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