岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
できない。画家が風景を描くとともに、風景が画家に描かされるとも言えるだろう。
以上、序論が長くなってしまったが、これらのことを踏まえ、岸田劉生の「写実論」を丁寧に読み解き、最後に「批評とは何か」という批評を述べたい。
1.岸田劉生「写実論」(pp.81-98)を読み解く。
ここで、改めて問題意識を確認する。写実とは、オリジナルとなる風景とコピーである作品の比較が評価の軸となりうるのかどうか。そして、写実には、画家のauthorityという問題がどのように関わってくるのか。この二つの問題意識を元に、岸田劉生の「写実論」を参照したい。
劉生の「写実論」は多くの写実家が陥る間違いを
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