岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
するならば、やはりオリジナルとコピーが似ているか似てないかといった比較の問題ではなく、作者は何故それを選んだのか、というauthorityの反映の違いこそが、写実を楽しむ術になるのではないだろうか。私はこのように考えついたことによって、写実的な絵を楽しめるようになったと言える。そしてauthorityの問題をもう少し考えるならば、authorityは画家だけが持つものではない。描かれる対象である風景もまたauthorityを持ち、画家に絵を描かせる権威を持つ。選ばれる風景と選ばれない風景。画家が風景を元に絵を描かなければ作品は生まれえないが、そもそも風景がなければ画家が写実的な作品を描くこともでき
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