岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
 
できない。そして、何よりも、写真はその写真家の選択が反映されているものだ。例えば、人を10人集めて「夕方5時に立教大学の本館を撮ってきてください」と指示したとする。時間・空間の限定をこのようにしたところで、どのような結果が出るかは想像に過ぎないが、全てが同じように撮られた写真が提出されることはないだろう。何故このようなことが言えるのかと言えば、写真家のauthority、選択がなされるからだと言える。何を・どこを美として、それを被写体にしようと思うかどうかは、写真家に委ねられている。そうした選択の権威があるからこそ、撮られたもの(作品)は異なるものになる。
 写真を例に考え、これを写実に援用する
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