岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
ているからだと言える。
このことと写実を考えるにあたり、写真についての意見を述べたい。写真は絵画と比べれば、オリジナルである風景をコピーする完全的な道具である。絵画は絵の具という現実とは異なる素材を用いて現実を描くが、写真はデジタル(1と0の数字)によって現実をより現実的に描く。無論、数字ではない現実(オリジナル)と数字である写真(コピー)はその内実においては異なるが、肉眼でその両者を見比べれば、写真は限りなく現実をコピーしたものであると言える。だが、果たして写真は現実のコピーであると言いきっていいのだろうか。写真は、現実の切り取りである。空間的にも時間的にも、現実の一部しか写しとることができ
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