岸田劉生「写実論」を読み解いて考える、批評とは何か/中川達矢
生はどのように考えていたのだろうか。このことから、少々エリート主義のようなものを感じさせる。画家が自然物から見出す美と作家や占い師や教師や児童などが自然物から見出す美は、必ずしも一致しないだろう。それは「心の問題」(authority)だからだ。しかし、劉生が思うところに、究極的な美が纏う姿や向うべき美は唯一であるような印象を受ける。なぜなら、真善美やイデア的な理想を劉生が讃えているように思えるからだ。後述する「批評とは何か」でも考えたい問題として、「書き手の立場」と「読み手の立場」に対する批評家の意識があげられる。劉生は画家であり、批評家だ。そうした点で、劉生は「書き手の立場」を強く保持したまま
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