月影/あおい印象/佐東
*
あおい夜のシナプスが
ピアノ線のよう
音もなくしのびこむ
月の影
月は ぼくを
しらない
ぼくも 月を
しらない
*
風のない夜
オオミズアオの鱗粉が
ささやかな瞳を
ひらく
窓辺に届けられる
呼吸を
静かにほどく
(きみの
脱ぎ捨てた
ちいさな羽根からは
月の匂いが
微かにしている)
*
ないしょだよ
やわらかな 耳たぶの産毛に
話しかける
明滅する星の寝息が
夜の底につみかさなる
*
まぶたの上に描いた
ひんやりとした輪郭
あおい月のひかり
きみの
故郷にある
大きなカルデラ
あおい湖面を
おもう
*
少女の祈る横顔が
約束のように揺れて星座になる
その 過程
ぼくは
ふるえるゆび先で
あおの意味を
しる
夜の喫水線を
軽々と越えて
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