月影/あおい印象/佐東
 


あおい夜のシナプスが
ピアノ線のよう

音もなくしのびこむ
月の影

月は ぼくを
しらない
ぼくも 月を
しらない






風のない夜
オオミズアオの鱗粉が
ささやかな瞳を
ひらく

窓辺に届けられる
呼吸を
静かにほどく

(きみの
脱ぎ捨てた
ちいさな羽根からは
月の匂いが
微かにしている)






ないしょだよ
やわらかな 耳たぶの産毛に
話しかける
明滅する星の寝息が
夜の底につみかさなる






まぶたの上に描いた
ひんやりとした輪郭
あおい月のひかり

きみの
故郷にある
大きなカルデラ
あおい湖面を
おもう






少女の祈る横顔が
約束のように揺れて星座になる
その 過程

ぼくは
ふるえるゆび先で
あおの意味を
しる

夜の喫水線を
軽々と越えて

















戻る   Point(7)