自然的感傷/ヒヤシンス
 

草原の中、黄色い自転車に乗って走り抜けてゆこう。
強烈な夏の日差しにも負けない冷たい風を全身に受けながら。

なんて爽快な午前。
この体にはびこる日常の現実が気持ち良く透き通った空間へ飛んでゆく。

そう、それは一つのイメージ。
サックスの夜も悪くはないが、今はフルートの昼間の風にただ漂う快感。

ああ、緑溢れるあの丘の上で仰向けに寝転がりたい。
草の匂いでこの胸をいっぱいに満たしたい。

そう、この感傷。久しく忘れていた感覚。涙なのか。
この落葉松の林道をこえるとあの丘が見えてくるだろう。

私は思い切りペダルを漕ぐ。目の前の未来に向かって。
私は精一杯ペダルを漕ぐ。流れゆく全ての光景が美しくかすむ。

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