夕方ちかくの細い夜に/カマキリ
夕方の細い夜に逃げ出した心が帰らない
大したことはおこらない
丸い窓を持ち上げて
少し空気を入れ替えるような当たり前のこと
感慨深く、目を閉じているわけでもない
警戒が服を着たわたしの
かろうじてある矜持を飾り付けるだけ
手元にあるのは
触れ合った面積だけ
こすりあった鼻先だけ
身勝手な推測で誰も傷つけたくない
落とした刃をこっちに向けて
手紙が来ないことに胸を撫で下ろしている
それでも
夕方の細い夜に逃げ出した心が帰らない
大したものは持ってない
血の通った両手を強く、守っているだけ
夕方の細い夜に
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