深夜一時、心地よくない秘密めいた場所にて/佐々宝砂
心臓がゆっくり動いている。
ゆっくりすぎる。
こういうのを徐脈というのだと
知識としては持っている。
目の前が白い。
何も見えないほどギラギラと白い。
白いがこれは眼前暗黒感に変化するものだと
経験として知っている。
などと考えることは可能で
脳裏にはあの使い古されたメタファのように
ここ何年かのあれやこれやが駆け巡るが
そのイメージも圧倒的なギラギラに覆い尽くされてゆく。
プレス機が乗っているかのように腹が痛い。
さっき排泄した大量の茶色い液体と
自分の尻についているであろうその液体の名残を
手探りで始末する。
自分の手首を探る。
脈が触れない。
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