アネモネ/中原 那由多
眺めているだけで満たされていた
モノクロ写真が色づくように 雪解け水が流れるように
チョコレイトの甘さに依存していた
苦い失敗を忘れるように 白い制服が汚れるように
後ろ髪引かれる君にさようなら
絡まった糸を解いてよ春風
届かない 渡せない 儚く散った花に
触れてみたら見えるでしょう アンソロジーは歪んでるんだ
巡り合わせに苛付いてもあの日の傷は癒えない
薬を飲むから水を頂戴
見つめていた先で聞こえる笑い声は
ガラス窓に落書きを増やしては 未来を隠して不安にさせた
繰り返すだけの他愛無い時間に
注がれたミルクをかき混ぜて 浮かんだ残像(けしき)に見とれてた
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