動物園(2)/Lucy
い事を知っているから。それならば身の丈にあう現状肯定の幸せつかもう。どうせ濁り切った空気と騒音にさらされ、ささやかな生を蝕まれていくなら、せめて子どもらに平穏な日常の営みを。せめてここには木陰があり、いくらかの草もある。自然によく似たとは言えないまでも、食うに困らず、いくらかの活動にも適した最小限に生き得る環境というものがあるなら、そのことに感謝すべきではないのか。我らは守られてあるのであり、この衰弱しきった世界を脱出することも、改変する力ももたない生き物である限り、このささやかな日常をせめて精一杯豊かにと、地味な努力を重ねる以外にわたしを生かし得るやり方は他にないのではないか。どれほどの不幸が世界を覆っていようと、ほうらひたすら眼を閉じていればかすかに、風の匂いは初夏なのだ・・。
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