定・考/月乃助
 
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夏の陽に 焼かれながら
後ろ手の 信玄袋をけつの下に
揺らし


女の背は 凛とし
黒紋付の羽織で、振り向く面(おもて)が艶やかだった


名は、定
床上手の 女


傷つくことを最大限にさけるため
すべての幸せを否定する
女の花を束ね その代償か、
業のように背負ってきた


定のうちには、窓一つ 引き戸一つありもせず
ただ一面の女色は、朱
誰もがそこへの入り方をしらず
女は、そこより外へでる術をしらずにいた


色欲が充たされれば
悦びは、涙を生むもの
愉楽とは、そんなもの


虚しさが恐ろしくて
定を画に、線に写
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